インターネット上での出会いが日常となる一方で、急増しているのが国際ロマンス詐欺(恋愛型投資詐欺)です。
これは「恋愛感情」と「投資詐欺」が巧妙に組み合わされた犯罪で、特に仮想通貨や海外投資話への勧誘が近年多発し、その被害額は数十億円規模に達しています。
本記事では、この国際ロマンス詐欺の典型的な特徴、実際の被害事例、そして何よりも大切な「自分を守るための対策」を徹底的に解説します。
国際ロマンス詐欺とは?巧妙な手口と実態
国際ロマンス詐欺とは、SNSやマッチングアプリなどオンライン上で知り合った人物が「恋人」や「パートナー候補」を装い、信頼関係を築いたあとに金銭や投資を要求する詐欺です。
詐欺師は以下のようなプロフィールを偽装することが多いのが特徴だそうです。
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外国在住のエリート投資家
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海外勤務の軍人や医師
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仮想通貨トレーダーや株式投資の専門家
被害者は恋愛感情を利用されることで冷静な判断力を失い、大金を失ってしまうケースが後を絶ちません。
そして最近では、この「恋愛感情」に加えて「投資詐欺」が絡むことで、さらに深刻な被害を招いています。
投資詐欺と結びつく仕組み:なぜ騙されてしまうのか
近年のロマンス詐欺は、単なる金銭要求にとどまらず、投資詐欺へ巧妙に誘導されるケースが激増しています。その典型的な流れを見てみましょう。
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SNSやアプリで接触
突然のDMや「いいね」から始まり、毎日連絡を取り合うことで親しくなります。相手はしばしば、魅力的なプロフィール写真や、AIが生成した架空の人物像を使います。 -
恋愛感情の演出
「あなたに運命を感じた」「将来は一緒に暮らしたい」といった甘い言葉で、被害者に安心感と特別な感情を抱かせます。結婚や同居といった具体的な将来の夢を語り、深い信頼関係を築こうとします。 -
投資の成功をアピール
ある程度関係が深まったところで、「私はFXや仮想通貨で成功している」「特別な投資グループに招待できる」といった言葉で、自身の投資実績や知識を誇示します。時には、偽の取引画面などを見せつけて信用させようとします。 -
偽アプリや海外口座への誘導
被害者に、詐欺師が用意した偽の取引アプリをダウンロードさせたり、海外の偽口座へ資金を送金するよう指示します。多くは海外の偽業者が運営するサイトで、正規の金融機関ではありません。 -
利益演出 → 高額入金へ
最初は少額の資金を投じさせ、「利益が出ました」と表示して信じ込ませます。被害者は「自分も儲かる」と錯覚し、さらに高額の入金を促されるまま資金をつぎ込んでしまいます。 -
出金不能・追加請求
いざ利益を出金しようとすると、「税金」「手数料」「システム解除費」などと称して、さらなる追加送金を要求されます。最終的には、すべての資金をだまし取られた後、詐欺師は連絡を絶ちます。
2025年最新動向と実際の被害事例
国際ロマンス詐欺の被害は年々拡大しており、2025年もその勢いは止まりません。
警察庁や各自治体への相談件数、メディアの報道からも、その深刻さが浮き彫りになっています。
統計・社会的影響(2024年の傾向から)
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被害額の急増: 警察庁によると、2024年のSNS型投資詐欺は被害額が871億円(前年比3.1倍)、ロマンス詐欺も397億円(前年比2.2倍)と、いずれも前年を大きく上回る急増を見せました。
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ターゲット層の拡大: 従来の40代~60代女性だけでなく、最近は投資型の詐欺で若年層や投資初心者も狙われる傾向にあります。
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マッチングアプリの利用: マッチングアプリがきっかけとなるケースでは「Pairs」経由が36%と最も多いというデータもあります。
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仮想通貨の悪用: 特に仮想通貨ウォレットや海外送金を利用した事例が急増しており、追跡が困難なケースも少なくありません。
実際に報道された被害事例
ここでは、実際に起きた被害事例をいくつかご紹介します。
事例1:婚活アプリ経由の仮想通貨詐欺で数千万円被害
40代女性が外国人男性と婚活アプリで知り合い、「結婚を前提に日本で暮らしたい」と愛情表現を受けました。途中で「私は仮想通貨投資で大きな利益を出している。一緒に将来のために資産を増やそう」と誘われ、専用アプリを使って送金。数百万円を入金しましたが、出金を試みると「税金が必要」と追加送金を要求され、最終的に連絡が途絶えました。被害総額は数千万円に及んだケースもあります。
事例2:SNSでの「美女トレーダー」によるトレード指導詐欺
30代男性がInstagramで「美女トレーダー」を名乗るアカウントからフォローされ、毎日のやりとりで親密に。やがて「海外に特別な投資口座があり、紹介できる」と案内され数十万円を入金。最初は利益が表示されましたが、さらに追加資金を求められ、不審に思って調べたところ偽サイトだったことが判明しました。
↑もちろんですが男性が騙されるケースも発生しています。
事例3:SNS型ロマンス詐欺で3億円超被害
ナイジェリア国籍の男らが、SNS(X、Instagram)で日本人男女30人をターゲットに偽のアイドルや投資家を名乗り、恋愛感情を利用して現金3億1500万円以上を詐取した事件が報じられました。だまし取られたお金はナイジェリアに送金されていたとされています。
事例4:株式投資を口実に600万円被害
70代男性がSNSで知り合った「日本人女性」から株投資話を持ちかけられ、600万円をだまし取られた事例。最近では、日本人になりすます詐欺師も増加しています。
被害に遭わないためのチェックポイント:自分を守る徹底対策
このような巧妙な詐欺から自分自身を守るためには、常に冷静な視点と正しい知識を持つことが重要です。
以下のチェックポイントを参考に、詐欺のリスクから身を守りましょう。
対策・予防チェックリスト
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会ったことのない人物からの投資話(仮想通貨・海外口座)は100%疑う
オンラインで知り合った相手からの金銭や投資の勧誘は、たとえどれほど親密な関係になったとしても、詐欺である可能性が極めて高いです。 -
「必ず儲かる」「短期間で大金」のワードが出た時点で即ブロック
このような非現実的なうまい話は、間違いなく詐欺の証拠です。投資に「絶対」はありません。 -
金融庁登録のある業者以外は利用しない(公式リストで要確認)
日本国内で金融商品取引業を行う業者は、金融庁への登録が義務付けられています。相手から勧められた投資先が正規の業者か、必ず金融庁のウェブサイトで確認しましょう。 -
相手の写真をGoogle画像検索や逆検索ツールでチェック
詐欺師はインターネット上から盗用した写真や、AIで生成された架空の人物写真を使用していることが多々あります。 -
少額でも送金・アプリインストールをしない
「少額からなら大丈夫」という心理を狙ってきます。一度でも送金してしまうと、さらに高額な資金を要求されるきっかけとなります。 -
一人で判断せず、家族や友人に相談する
詐欺師は被害者を孤立させようとします。少しでも不審に感じたら、信頼できる第三者に相談し、客観的な意見を求めることが重要です。 -
「海外在住」や「軍人」といったプロフィールに注意
これらは詐欺師がよく使う設定です。「会えない」「簡単に日本に来られない」といった状況を意図的に作り出し、実際に会って正体を暴かれることを避けます。
被害状況の統計(2024年の傾向)
年 | 投資詐欺被害額 | ロマンス詐欺被害額 | 通報事例 |
2024年 | 871億円 | 397億円 | 急増、前年の2倍以上 |
2025年 | 記録更新中 | 記録更新中 | 北海道、大阪、関東で多発 |
これはあくまで報告された数値であり、実際にはさらに多くの被害者がいると推測されます。
もし被害に遭ってしまったら
万が一、被害に遭ってしまった場合は、時間との勝負です。
早期の対応が被害を最小限に抑えるカギとなります。
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送金をすぐにストップする
これ以上の金銭を支払わないことが最優先です。 -
警察・サイバー犯罪相談窓口に連絡
速やかに最寄りの警察署、またはサイバー犯罪相談窓口に相談しましょう。 -
消費生活センター(188)へ相談
国民生活センターや消費生活センターでは、詐欺に関する相談を受け付けています。 -
使用した口座やアプリをスクリーンショットで保存(証拠確保)
詐欺師とのやり取りのメッセージ、振込履歴、使用した偽アプリの画面など、あらゆる情報を証拠として保存しておきましょう。
まとめ:冷静な視点と知識で自分を守る
国際ロマンス詐欺は、恋愛感情を利用した犯行に仮想通貨や海外投資詐欺を組み合わせることで、被害者の心理を巧妙に操作し、莫大な金銭被害へ発展します。
「愛情」と「投資の儲け話」が同時に出てきたら、必ず詐欺を疑ってください。
金融庁未登録の投資業者とは一切関わらないことが、最大の防御策です。
健全な出会いや投資を守るために、常に冷静な視点を持ち、少しでも不審に思ったら第三者に相談する勇気を持ちましょう。