高配当ETFとして個人投資家に人気の「SCHD(Schwab U.S. Dividend Equity ETF)」。
安定した配当成長と市場を上回るリターンで知られていますが、現在の市場環境でその魅力は健在なのでしょうか?
最新のデータに基づき、SCHDの現状と2025年の見通しを深掘りします。
SCHDの魅力:揺るぎない配当成長と堅実な財務
まず、SCHDが長年にわたって評価されてきた理由から見ていきましょう。
1. 途切れない配当成長の実績
SCHDは景気変動下でも配当を維持・増加させてきた実績を持っています。
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2025年(上半期):$0.509(前年同期比+6.40%)
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2024年:$0.9944(前年比+12.23%)
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2023年:$0.886(前年比+3.77%)
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2022年:約$0.85
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2021年:約$0.75
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2020年:約$0.70
特に2024年の配当成長率は目覚ましく、2025年上半期も堅調な伸びを見せています。
最新の年間配当予測は約$1.03(過去12ヵ月)で、配当利回りは約3.67%です。
2. 健全な配当性向
企業の配当支払能力を示す配当性向(payout ratio)は、最新データで約57.80%と非常に健全です。
これは、企業が利益の半分以下を配当に充てており、残りを事業投資や内部留保に回す余力があることを示唆しています。
この余力が、将来の配当成長の安定性にも繋がります。
3. 過去10年間の安定したリターン
過去10年間の年平均リターンは約11.18%(配当込み)を記録しており、S&P 500を上回る時期もありました。
配当による再投資効果が総リターンを押し上げてきた証拠です。
現在の課題と短期的な逆風
1. S&P 500に対するアンダーパフォーム
2025年上半期、SCHDはS&P 500(SPY)に対してアンダーパフォームしており、年初来リターンが低迷しているという声も聞かれます。
市場が史上最高値を更新するような局面でも、SCHDの価格リターンは1%未満に留まることがあります。
2. 評価機関によるレーティングの低下
Morningstarのレーティングも、以前の5つ星から4つ星に低下しました。
また、大型バリューカテゴリ内でも下位(2024年は下位25%)に位置するなど、評価が厳しくなっています。
3. 低迷の背景
この短期的な劣後は、現在の金利環境や成長株優位の市場構造が主な原因とされています。
金利が上昇すると、将来の成長が見込まれるグロース株への関心が高まり、配当利回りの魅力が相対的に薄れる傾向があります。
また、最近のAI関連銘柄などの成長株への資金集中も、バリュー株中心のSCHDには逆風となっています。
2025年後半も同様のリスクが指摘されています。
2025年の見通し:再構成がもたらす変化と期待
このような状況下で、SCHDは2025年に大きな転換点を迎えています。
1. ファンドの再構成(Reconstitution)
2025年のファンド再構成(reconstitution)は、SCHDにとってポジティブな変化をもたらす可能性を秘めています。
この再構成により、保有銘柄の19.2%が入れ替わりました。
2. セクター構成の変化
最も注目すべきはセクター比率の調整です。
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金融セクターの露出を大幅に減らし、約10%未満に。
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エネルギーセクターは約8%増加し、全体で19~20%と大幅に強化。
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消費財セクター(生活必需品および一般消費財)も強化。
このセクターシフトは、現在のマクロ経済環境、特にインフレやエネルギー価格の動向に対応するための戦略的な動きと見られます。
金融セクターは金利上昇局面で恩恵を受けることもありますが、景気後退リスクには脆弱な側面もあります。
一方で、エネルギーや生活必需品は景気変動に比較的強く、安定したキャッシュフローを生み出しやすい特性があります。
3. 配当成長への期待
この再構成が早速効果を発揮し、2025年Q1の配当は前年同期比で22%も増加しました。これは、ファンド全体の配当成長が今後も継続する強いシグナルと言えるでしょう。
4. 価格予想
SCHDの今後の株価について、専門家であるアナリストたちの間でも様々な見方があります。以下のように、強気な意見から慎重な意見まで幅広く存在します。
1. 平均的な目標株価:約10%の上昇を予測
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多くのアナリストの予想を平均すると、SCHDの目標株価は $30.07 となっています。
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これは、現在の株価から約10.32%の上昇が見込める水準です。
2. アナリストたちの意見の幅
ただし、これはあくまで平均値であり、アナリスト全員が同じ意見というわけではありません。
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最も強気な予想(楽観的な見方): 中には「$35.50 まで大きく上昇する」と予測するアナリストもいます。
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最も弱気な予想(慎重な見方): 一方で、「$25.23 まで下落する可能性もある」と考えるアナリストもいます。
結論として、どう考えればよいか?
このように専門家の間でも意見が分かれていますが、全体的な意見をまとめると「大体$30前後がひとつの目安」と見られています。
一部には「将来的に70や80を超える」といった非常に強気な予測も存在しますが、それは現時点では少数派の意見です。
多くの専門家は、爆発的な急成長ではなく、今後1年程度で10%前後の着実な値上がりを期待している、と理解すると分かりやすいでしょう。
まとめ:長期投資家にとってSCHDは?
SCHDは短期的にはS&P 500や成長株優位の市場において劣後する可能性があります。
しかし、その配当成長の強さと安定性を考慮すると、長期投資家向けの魅力は依然として残ります。
特に、2025年のファンド再構成によるセクター調整は、
失業率上昇、AIの進展、関税政策といったマクロ要因への対応として効果を発揮する可能性が高く、結果的に総リターンは競争力のあるものになると予想されます。
短期的なボラティリティは考慮すべきですが、ポートフォリオの一部としてSCHDを組み入れ、分散を図ることは悪く無い選択肢かなとわたしは考えています。
投資判断は、必ずご自身のリスク許容度と投資目標に合わせて、最新の市場状況を確認した上で個別に行うことをお勧めします。